大学で地域社会学科を専攻しました。キャンパスのある埼玉県岩槻市は、人形作りが盛んな地域。その貴重な歴史や観光資源としての可能性を、フィールドワークを通して探りました。大学時代に綴ったノートには、地元の若手起業家、伝統工芸士とコラボレーションした地域活性のキーマンの名前等が書き記してあったりして、今の仕事にも通ずる部分が多く見受けられます。漠然とはしていましたが、地域の課題や問題に興味を持っていたのだと思います。
だからでしょうか、会社探しも社名にピンときたようです。「地域」と「活性化」という文字に反応したんですね(笑)。うっすらとした興味にピントが合ったような出会いでした。
しかし、地活研の仕事を理解するまでには経験が必要でした。最初は、誰のために何をする会社かがわかりません。もちろん、地域を活性化することが使命の会社ですが、決まった方法があるわけではありません。国や地方の政策に明るく、時代や社会の問題に鋭く反応するセンサーをもたなくてはならず、研究員としての自覚も必要です。そう思えるようになるまで、社内・社外問わず、多くの方々からアドバイスや時にはお叱りもいただき、とても貴重な経験をすることができました。
現在は、金融機関がクライアントで、全国でのシンポジウム事業の構築を行っています。登壇者には、地域のステークホルダーの方々を予定しており、地活研の業務の中でも最大限の気配りと配慮が求められるポイントです。また、地域でのイベント事業などに合わせ出張もあるため、体調管理も含め体力が求められます。頭と体をフル活動するところが、地活研の仕事のポイントであり、やりがいのあるところです。
入社2年を過ぎた頃、とても印象深い仕事を経験しました。地域の子供たちから、自分が住む町や村の未来に残したい大好きな場所を写真投稿してもらう、「全国子供フォトコミュニケーション」という案件であり、「持続可能な開発のための教育」(ESD=Education for Sustainable Development)の一貫として行われた事業です。
地活研の仕事は、国の政策を地方に発信するのが大半ですが、このプロジェクトは逆。地方の子供たちから送られてくる地域の写真に、「地域の良さに」について教えを受けた思いでした。なにより小学生たちの撮影の視点が面白いのです。大きな杉の木の写真もあれば、小さな公園や小川もあるし、綺麗な棚田や学校の裏手の雑木林もあったりと、被写体は実にさまざま。構図の手慣れた子、お目当てがフレームからはみ出しても気に留めない子、躍動感があり子供にしか撮れない世界など。子供ならではの豊かな感受性に圧倒されました。
以前、北海道森町、秋田県湯沢町、熊本県小国町の3地域の小中高生を対象に、地域資源である「地熱」についての出前授業の仕事を担当しました。恥ずかしながら、それまでに私が知りえた地域とは、県庁所在地が大半でしたから、空港から3時間以上も車に揺られてたどり着いた小国町の風景は、とても新鮮でした。小国町は地熱やバイオマスに真摯に取り組み、環境未来都市やSDGsの指定も受ける、とてもポテンシャルの高い町です。また、小国町の子供たちはとても礼儀正しく、こちらの背筋が伸びる思いでした。地域としてのポテンシャルも人柄も優れている小国町に魅了された私は、地域のブランド化の重要性を実感し、この地で研究員としての自覚を新たにしました。
とにかく経験がモノを言う仕事です。地域の活性化のためには、ひとつでも多くの地域の問題や課題を見聞き、知る必要があります。日本は1714個の市町村の集合体ですが、ひとつ一つの町や村に人が暮らし、生活が営まれ、地域ごとの課題も抱えています。いつからか合言葉のように「地域創生」と口にするようになりましたが、この国を元気にする特効薬があるわけではありません。各自治体が試行錯誤を繰り返しながら答えを探しています。まだ序の口の研究員ですが、私も自分なりの答えを探していかなければなりません。